Out of Office サラリーマン週末旅行記録

とあるサラリーマンの週末旅行記&搭乗記。2022年より米国在住。

4日目:テヘラン散策 (3) 旧アメリカ大使館

午後は地下鉄に乗って旧アメリカ大使館へ。テヘランの地下鉄駅には自動券売機は無く、チケットは有人カウンターで購入します。

f:id:Pablo21:20191215132153j:plain

テヘランのメトロも女性専用車両は設置されています。一方、マシュハドと違い男性専用車両の設置は無く、女性はどの車両でも利用できるようでした。

f:id:Pablo21:20191215132201j:plain

平日の昼間でも地下鉄は大混雑。さすが大都市テヘランです。

f:id:Pablo21:20191215132315j:plain

アメリカ大使館の最寄駅であるタレガニ(Taleghani)駅で下車。駅から北側を望むと、市街地のすぐ後ろに聳えるアルボーズ山脈の山々が目に入ります。既に雪に覆われていますが、冬はテヘラン市民にとってのスキースポットになるそうです。

f:id:Pablo21:20191215132324j:plain

タレガニ駅から歩いてすぐのところにある、旧アメリカ大使館。1979年2月のイラン革命後に国外亡命したパフラヴィー元皇帝をアメリカが受け入れたことに反発して、同年11月に発生したイランの学生によるアメリカ大使館占拠事件の舞台です。

現在は"Den of Espionage"(=スパイの巣窟)という名前が付けられ、イラン政府による反米プロパガンダのためのミュージアムになっています。

f:id:Pablo21:20191215132340j:plain

まず目を引くのは、外壁のプロパガンダ壁画。占拠事件からちょうど40年というタイミングだったので、それに合わせ壁画が新しいものに更新されたばかりというところでした。

f:id:Pablo21:20191215132523j:plain

どれもアメリカを皮肉るような壁画ばかり。

f:id:Pablo21:20191215132457j:plain

オバマ前大統領の時代には雪解けの気配も見られましたが、トランプ現大統領の強硬姿勢の下では関係改善は見込めません。そういう背景もあっての壁画の更新なのでしょう。

f:id:Pablo21:20191215132519j:plain

壁画だけではなく、ドクロが埋め込まれているような場所も。ここまで行くと悪趣味な気もしますが。

f:id:Pablo21:20191215133454j:plain

壁画を一通り眺めたところで敷地内へ。外国人にとっては定番の観光地となっているらしく、団体の観光客ツアーでも訪れているようでした。

f:id:Pablo21:20191215132534j:plain

入り口に掲示されていたのはこの張り紙。なかなか面白い絵です。

f:id:Pablo21:20191215132542j:plain

内部にも数多くのプロパガンダ作品が展示されています。硫黄島の有名な写真も反米勢力の手にかかればこんなもの。

f:id:Pablo21:20191215132607j:plain

反米だけでなく、反シオニズム的な展示もあります。比較的最近の事象であるイエメン紛争をテーマにしているので、定期的に展示物の入れ替えもあるのでしょう。

f:id:Pablo21:20191215133344j:plain

インスタグラム投稿を模しているわけですが、コメントを入れているのはトランプ大統領(米国)、ネタニヤフ首相(イスラエル)、サルマン国王(サウジアラビア)、ムハンマド首長(ドバイ)、ハマド国王(バーレーン)。イラン政府がどこを敵と考えているかがよくわかります。

f:id:Pablo21:20191215133353j:plain

逆に、敵はアメリカ国民では無くアメリカの政治リーダー達なのですよ、というメッセージも。こうした主張は11年前に訪れた時には無かった気がします。

f:id:Pablo21:20191215171233j:plain

数多くのプロパガンダ展示に加え、当時のアメリカ大使館の内部の様子も再現されており、これも一見の価値がありました。例えばここは大使室とのこと。

f:id:Pablo21:20191215132710j:plain

これは機密情報をやり取りするための防音設備の整った部屋。当時のものをそのまま残しているそうです。

f:id:Pablo21:20191215132648j:plain

置かれた機械類の古さには、40年の年月を感じさせます。

f:id:Pablo21:20191215133428j:plain

40年前の大使館占拠事件時にイラン人学生が壁に書いたメッセージもそのまま残してありました。ペルシャ語部分は、"This den of espionage should be shut down, Long live Khomeini"と書かれているそうです。もしかしたらこのメッセージが今のミュージアムの名称の由来かもしれません。

f:id:Pablo21:20191215133415j:plain

1年以上にも亘った大使館占拠の間、50人以上のアメリカ人の人質に対する処遇についても、きちんとしたものだったとイラン側は主張しています。これは監禁等があったとするアメリカ側の主張とは真っ向から反対のもの。真実はわかりません。

f:id:Pablo21:20191215133307j:plain

その他15分ほどのビデオ上映もあり、計1時間程度で見て回れる規模のミュージアムでした。ここの掲示をそのまま鵜呑みにする人はさすがにいないでしょうが、イランとアメリカの歪んだ関係性を理解するという意味では、興味深い場所であることは間違いありません。