この日は、タウポ南部に位置するトンガリロ国立公園を横断するトレッキングルートである『トンガリロ・アルパイン・クロッシング』に挑戦。ニュージーランドには世界的に有名なトレッキングルートがいくつもありますが、その中でもこのトンガリロ・アルパイン・クロッシングは日帰り可能なコースとしては世界でも屈指の絶景ルートであると評判。このために4日間という弾丸で日本からやって来ました。
距離は19.4kmで、標高1,190mからスタートし、最高地点で1,868mまで上がって、760m地点まで下りたところでゴール。縦走型なので単純往復と違い、最初から最後まで違った景色が楽しめます。
スタート地点までは、Tongariro Expeditions社が運行するバスで移動。往復で70NZドル(=約5,300円)と良い値段ですが、オンラインで予約する時にホテル名を伝えておくと、当日朝5時頃にホテルまで迎えに来てくれるので便利です。
20分ほどかけてタウポ市内の各ホテルを周ってトレッカーをピックアップしたのち、一路トンガリロ国立公園へ。目的地が近づいて来ると、真正面に富士山そっくりのシルエットをしたナウルホエ山が見えてきました。トンガリロ国立公園内の最高峰です。
朝7時前に出発地点のマンガテポポ小屋(Mangatepopo Hut)に到着。この日は週末だったこともあり、バスが何台も集まりかなりのトレッカーの数です。
入り口には、きちんとした装備を持っているか確認のための看板が掲示されています。実際、かなりラフな装いで来ている人も少し見かけましたが、山の天気は変わりやすいのでしっかりした準備が必須。実際、2016~2017の2年間で68人ものトレッカーがレスキュー隊に救助されているようですので、侮ってはいけません。
7:05、まだ薄暗い中をトレッキング開始。
しばらくは平坦な道が続きます。
さすがニュージーランド屈指のトレッキングコースなだけあり、整備はかなりしっかりとされています。次のトイレの位置まで表示してくれるのは、日本でも見たことがありません。
歩き始めて15分ほどでレンジャースタッフによるアンケート調査が実施されていました。5分ほどで終わる調査だったのでぜひ協力します。年齢、国籍、今日訪れた理由等、内容としてはよくあるものでした。
ナウルホエ山に近づいて来ると、少しずつ朝日に照らされてきました。
日が出てくると同時に、雲も出始めてきました。何とか晴れてほしいものですが、天候ばかりはどうしようもありません。
1時間ほど歩いて8:10、1,400m地点のソーダ・スプリングス(Soda Springs)への分岐地点に到着。
分岐点からソーダ・スプリングスまでは片道数分なので、少し立ち寄ってみました。
ソーダ・スプリングスとはこの小さな滝のこと。わざわざ立ち寄るほどでは無かったかもしれません。
ソーダ・スプリングスから先はしばらく急登が続きます。引き返すならここで、という注意書きの看板も立っていました。当局としても気軽な気持ちで来る準備不足のトレッカーへの対応に苦慮していることが伺えます。
急登の途中、こんな格好で登っているドイツ人を見かけました。ジーンズにショルダーバッグと、あたかも街へ買い物に行くかのような服装です。
随分登ってきました。
東に向かって歩いて行くコースなので、太陽が昇って来ると直射日光を前面から受ける形になります。サングラスは必須です。
9:00、急登区間を終了。ナウルホエ山の直下までやって来ました。ありがたいことに雲も晴れています。
ロードオブザリングの撮影地として有名なニュージーランドですが、このナウルホエ山は"滅びの山"として映画にも登場しています。ただし、実際はマオリの聖なる土地であり、現在は山頂へのアタックは禁止。頂上に登れば素晴らしい眺望でしょうが、諦めるしかありません。
ナウルホエ山の脇を過ぎたら、ルートはサウス・クレーター(South Crater)へ。クレーターの中を歩くのでここもしばらくは平坦。
サウス・クレーターの端まで来たら、再び急登でクレーターの上へ。ここからもナウルホエ山が美しく見えます。
反対側に広がるのはレッド・クレーター(Red Crater)。名前の通り、不気味に赤く染まったクレーターです。中央の崩落した岩の構造といい、確かにロードオブザリングに出てきてもおかしくない雰囲気。
この2つのクレーターに挟まれた場所が、本日の最高地点1,868m。奥にはナウルホエ山と並ぶマオリの聖なる土地であるトンガリロ山が構えています。こちらも同様に現在は山頂へのアタックは禁止。
数年前までは山頂まで行く登山道もありましたが、現在はこの通り"GO BACK"の表示があり先に進むことはできません。
ここからは一気に下り。下に見えるのはエメラルド・レイクス(Emerald Lakes)です。
ここの下りはかなり急で足場も不安定なので要注意。つまづいているトレッカーを何人も見かけました。
本当に名前の通りエメラルド色をした池です。ここもマオリの聖地らしく、入水することはもちろん、水に手を触れることや、水の脇で食事をすることすら禁止されています。ただし、池の脇でランチ休憩をしている欧米人トレッカーも多く見かけたので、厳密に守られているわけではなさそうですが。
10:15、池のほとりで少し休憩。朝は少し雲が出ていましたが、今の所天気には恵まれています。
続々と下ってくるのはトレッカーの大群。入場人数の制限が無く誰でも入れるため、シーズンの週末はこの混雑で落ち着きが無いのが残念なところです。
ちなみに、池の周囲はこの通り噴煙が至るところから上がっており、硫黄臭が漂います。日本人であれば温泉地等でよく嗅ぐこの匂いですが、欧米人は苦手なのか噴煙を明らかに避けているようでした。
2年前に訪れたアイスランドとどこか似通った風景なのは、どちらも火山国という共通点があるからでしょうか。
ここからゴールまでは10.4km、ちょうど距離にして半分地点まで来ました。ただし、ここから先は下りなので、所要時間で考えるともう半分以上来ています。
再びクレーターの中を平坦な道が続き、その後で少し登ると現れたのはブルー・レイク(Blue Lake)。
ブルー・レイクを過ぎると、後は下るのみです。この辺りで一気に雲に囲まれてしまい、眺望がゼロになってしまいました。
30分ほど黙々と下ると、やっと雲の下に。
遠くにバスの姿が見えました。あそこがゴールのようです。
11:30、ケテタヒ小屋(Ketetahi Hut)に到着。標高にして1,040mまで下ってきました。
小屋は無人で中に入ることは出来ませんが、外にベンチがいくつか設置されているので、ここでランチ休憩にします。献立は日本から持ってきたアルファ米。
小屋からの景色。右手に見えるのがタウポ湖です。早く下りても帰りのバスの出発時刻は14時なので、1時間ほどゆっくり休みました。
小屋から先は比較的単調な下り。前半と違い景色もあまり代わり映えせず、どんどん進みます。振り返ってみましたが、やはり上の方は雲に覆われてほとんど見えず。昼過ぎからは雲が現れることが多いので、早めに歩いてしまうのが吉のようです。
最後の1時間は樹林帯。
13:30、ゴールのケテタヒ駐車場に到着。スタートからゴールまで、1時間の休憩を含めても6時間半で踏破しました。
感想としては、やはり人気の裏返しということで人の多さが気になるトレックでした。景色は素晴らしいのですが、手軽に日帰りで絶景を味わえるとあっては人気が出るのは必然です。結果として、大自然の静寂に浸ってリラックスするというのは無理な話なのでした。もしこのトレックを挑戦される方がいたら、少なくとも週末は避けることをおすすめします。