今回テネリフェ島までやって来たのは、スペイン最高峰であるテイデ山(Pico Teide)に登頂するため。スペインの最高峰は、実は本土ではなくカナリア諸島のこの島にあるのです。標高は3,718mと、富士山より少し低いくらい。
この山、頂上まであと30分というところまでロープウェイでのアクセスも可能なのですが、もちろん今回は地道に1泊2日で登ります。バスを使ったアクセスの場合、登山ルートは主に以下の3つ。
- ブランカ山(Montaña Blanca)の麓から登り始めるコース。登山口標高2,350m、頂上まで9.3km。下の地図では青色です。
- ポルティージョ(El Portillo)にあるビジターセンターから登り始めるコース。途中で1.と合流します。登山口標高1,980m、頂上まで13.0km。下の地図では紫色です。
- パラドール(Parador)から登り始め、ビエホ山(Pico Viejo)を通るコース。登山口標高2,140m、頂上まで10.0km。下の地図では水色です。
1泊2日で登る場合、宿泊先となる避難小屋がブランカ山側にあるため、1.か2.で登るのが主流。1.の方が標高差が小さく距離も短いので楽なのですが、今回は時間に余裕もあるので2.を選択しました。帰りは3.を採用してビエホ山経由で下山します。
当日の朝、プエルトデラクルスの町から9:30発のバスに乗車。テイデ山方面へ向かう348番の路線は上記1.2.3.の全ての登山口やロープウェイ駅を通るので登山者御用達ですが、運行は1日1往復しかありません。乗り遅れは厳禁です。
インターネット上の情報では満席で乗れなかったというものもあったので、少し早めにバス停に着いて並んでいたのですが、この日は乗客は10名前後しかおらずガラガラ。やはりこの島では観光客は基本レンタカーで移動するようです。
バスの車窓から山の方を見上げてみると、分厚い雲で山影は全く見えません。少し不安になる天気です。
ところが、その不安はすぐに解消。雲は海岸沿いにかかっているだけで、バスが標高を上げていくに従って、いつの間にか青空が広がるようになりました。下には雲海が見えます。
乗車時間1時間ほどで、ポルティージョに到着。標高1,980mです。
早速、真っ正面にはテイデ山が。これからあの山頂を目指して登山開始です。
その前に、まずはビジターセンターで情報収集。無料地図はもらえますが、水やスナックを売っているようなショップは無いので、必要なものは麓で予め調達しておく必要があります。
11:00、準備を整えてから登山開始。ビジターセンター左脇のスロープから登山道が始まります。
最初はしっかり整備された散策路。この辺りは本格的な登山者でなくとも散歩気分で歩けるようになっています。
テイデの山肌に見えるそれぞれの色の解説板。黒い部分が溶岩が流れた跡で、頂上の白く飛び出た部分は1,000年前の噴火で新たに盛り上がった部分だそう。その形から、パンデアスカル(Pan de Azúcar)と呼ばれています。
最初の1~2kmは様々な散策路が入り組んでいるため分かれ道が多いのですが、必ずこのような標識があるので迷うことはありません。
しばらくすると、登山道らしくなって来ました。常にテイデ山を正面に見ながら進んでいくことになります。ただ、この辺りは勾配も緩やかなので楽々です。
ちなみに、テイデ山の左側に見える丘がブランカ山。Blancaとは"白い"という意味ですが、まさにその名前の通りの見た目です。
テイデ山に少しずつ近づいてくると、徐々にパンデアスカルの部分が見えなくなります。この辺りで岩陰を見つけたので、30分ほど休憩をしてランチタイムに。
13:30、ブランカ山の手前でもう1つの登山ルート(青色)と合流。この辺りから、少し勾配がキツくなります。
後ろを振り返るとこんな風景。遠くにはポルティージョの集落も微かに見えます。
テイデ山の溶岩跡にかなり近付いて来ました。この辺り、大きな岩がゴロゴロ転がっているのですが、噴火の勢いで飛んできたわけではなく、流れて来た溶岩から一部が転げ落ちる時に、雪玉の要領で転がる間に大きくなって出来たものだそう。
ここではTeide Eggsと呼ばれているそうです。
14:15、ブランカ山の山頂への分岐点に到着。ここから山頂までは片道0.7kmしかなく、せっかくなので立ち寄ることにしました。
分岐点から山頂まではほぼ平坦。10分ほどの道のりです。
これが山頂。遠くから見えていたシルエットから想像は出来ましたが、山というよりは丘という程度の雰囲気です。
南側を望むと、明日の下山地点であるパラドールも小さく見えます。写真中央の、盆地部分に岩がゴツゴツ出ているあたりです。
ブランカ山から望むテイデ山。山頂部分のパンデアスカルはほぼ見えませんが、ロープウェイ の鉄塔と山頂駅が見えます。
頂上で30分ほど昼寝をしながら休憩した後に、再び行動開始。15:10に分岐点に戻って来ました。ここから本日の目的地である避難小屋までは2.4kmなのですが、かなり角度のある急登がひたすら続きます。
1時間弱ほど歩いたところの中間地点あたりで休憩。標高3,000mを越えており、息苦しさを少し感じ始めます。既にブランカ山はかなり下の方でした。また、奥の方にはグランカナリア島も見えます。
分岐点から1時間半ほどで、やっと避難小屋が見えて来ました。
16:50、アルタビスタ避難小屋(Refugio Altavista)に到着。
この避難小屋は予約制で1泊21ユーロ。空きがあれば予約無しでも泊めてもらえるらしいのですが、夏場のこの時期は毎日満室が続いており、予約無しの場合は容赦無く追い返されます。日本人の感覚では山小屋が宿泊希望者を追い返すというのはあり得ないのですが、ここでは普通なようなので要注意。以下のウェブサイトから事前に予約しておきましょう。
到着時点では、室内はロビー部分のみ開放。キッチンは17時から、ベッドルームは19時からしかそれぞれ開きません。
ロビーには自販機があり、これはいつでも利用可能。スナック類のほか、コーヒーマシン、500mlの水ボトル等もありますが、全て一律3ユーロ。
自販機はコインしか受け付けませんが、自動両替機もきちんと準備されています。
17時になるとスタッフが出て来てキッチンをオープン。ここでチェックインも行います。キッチンには電子レンジ、鍋、ケトル、食器類が完備されているので、食材さえ自分で持って来ればOK。水は一応"飲用不可"と書いてありますが、スタッフに確認したところ、煮沸すれば飲んでも大抵の人は問題無いとのことでした。
チェックイン時に使い捨てのシーツを渡されます。これは使用後は自分で持ち帰らなければいけません。
夕食は日本から持ち込んだアルファ米とフリーズドライの豚汁。3,000mを超える標高のせいで、袋がかなり膨らんでいます。多くの登山客は19時頃に到着し、その後はキッチンも混み合っていたので、早めに食事を済ませたのは正解でした。
19:30頃、日の入りが近づくと、徐々にテイデ山の影が姿を現し始めます。
きれいな円錐形。自然のショーです。
最終的には、奥に見えるグランカナリア島に重なったあたりで日没となりました。
寝床は、10人部屋の2段ベッドの下段を指定されました。スタッフがその日の予約状況から、グループがバラバラにならないようにうまく組み合わせを考えて調整してくれているようです。私は1人なのでどこでも関係ありませんでしたが。
21時過ぎには就寝。屋内は暖かく、ブランケットも提供されるため寝袋等は不要でした。