この日は4WD車をチャーターして、1日かけてアドラール地方を周遊します。朝にアタールを出て、テルジット(Terjit)、ムヘリト(M'Heirth)、ザルガ山(Zarga Mountains)を経由してシンゲッティまで向かうルートです。車は宿で手配をして、ドライバーとガソリン代込みで115ユーロ。オフロードが多く燃費が悪いことも考えれば、適正な価格と言えると思います。
朝7時に出発。アタールからテルジットまでの区間は、最後の数百メートルを除いてほぼ舗装済みで快適です。
アタールの周辺は米国のモニュメントバレーのような独特な地形が広がっています。
1時間弱でテルジットの村に到着。
谷沿いに広がるこの小さな村は、水が湧き出るオアシスがあることで有名。アタールからのアクセスも容易で、観光客が最も訪れやすい村の一つです。それを示すように、村の入り口には英語の看板も。
村に着いたら入村料として150ウギア(=約450円)を払い、奥にあるオアシスへと歩いて向かいます。先導してくれている民族衣装の現地人はドライバーです。
歩いて5分でオアシスに到着しました。一応綺麗に整備されており、キャンプなども出来そうな雰囲気。
小川の中には小魚も。灼熱の気候ですが、このオアシスの中は涼しげです。
崖の下に位置しており、このおかげで午後の暑い時間帯は日差しが遮られるとのこと。良く考えられた立地のようです。
どういう訳かこの崖は水分を含んでいるらしく、崖の下からは天然のフィルターで濾過された水が滴り落ちてきます。観光客が飲んでも問題無い水質で、良い水分補給になりました。
今回はプライベートチャーターなので、好きなだけ一つの場所に滞在できるのが良いところ。せっかくなので、オアシスの裏にある斜面の上に登って見ることにしました。
少し登っただけで、このオアシスが崖に挟まれた絶妙な場所に位置していることがわかります。
更に30分ほど上に登ってきました。この独特な地形のおかげで、テルジットと同じような渓谷はいくつもありそうな様子です。
反対側はフラットな土地が広がっていました。どうやらこの部分がちょうど低地と台地の境目のようです。
よく目を凝らすと、そちらの方に続く道が見えます。この更に奥にまだ村があるのでしょうか。
崖を降りて、テルジットの村に戻ってきました。ここモーリタニアではアフリカ他国の例に漏れず大人は写真を嫌がる人も多いですが、子供は基本OK。あまり外国人慣れしていない感じです。
村の家々は非常に質素な造り。大雨が降ったら水が滲み出てしまうのではないかと心配になるほどです。
2時間ほど滞在してテルジットを後にし、更に先へと車を進めます。道は徐々に低地から台地へと上がってきました。渓谷が広がる雄大な風景です。
少し進むとムヘルトへ向かう分岐点。
ここから先はオフロードです。とはいえ、台地の上は平坦なので道もまっすぐ。すれ違う車こそなかったものの、幅広い道路はそれなりに交通量が多いことを推察させます。
30分ほど走らせて、ムヘリトの町が見えてきました。ここもテルジットと同じく、台地の間を縫って流れる川沿いの低地に広がる町のようです。規模はテルジットよりも大きめ。
家の形は基本的にテルジットと同じ。
日中は外を歩くには暑すぎるのか、人の気配が全くありません。ゴーストタウンのよう。
ムヘリトはテルジットのような美しいオアシスがあるわけでも無いので、一通り町をぐるっと見たらそのまま通過。続いてザルガ山方面を目指します。
道中、たまに現れるのはラクダ。この辺りに生息しているのは全てヒトコブラクダです。
どこまでも平坦な道でしたが、奥の方に山が見えてきました。あれがザルガ山。
これがザルガ山。砂漠の中に広がる黒い岩が印象的で、そのコントラストから、現地では二色の山 (Montagne Bicolore)とも呼ばれるそう。
ザルガ山を眺められる木の下で休憩タイム。ちょうど昼時なので、昨日アタールで入手したフランスパンとツナ缶でランチです。
この木、日陰を作り出してくれるのでありがたい存在のですが、頭上に気をつけないと、枝に生えた無数の棘に刺されてしまいます。砂漠のような過酷な環境で、鳥やラクダに食べ尽くされずに生き残るための進化の結果でしょう。
葉は小さいですが、枝がいくつも折り重なれば日差しをさけるには十分です。
ドライバーが枯れ枝を集め始めたので何かと思いきや、火を点けてお茶を準備し始めました。モーリタニア人はお茶が大好きな民族だと聞いてはいましたが、ここでようやく初体験。
お湯が沸いたら砂糖を追加。これがまだ尋常では無い量で、小さなグラス2つ分のためにスプーン山盛りで3杯も投入していました。そもそもお茶自体は緑茶なので砂糖など入れる必要無いのですが、郷に入っては郷に従え、です。
砂糖を足しても、まだすぐには飲めません。次はティーポットを高く掲げてグラスにお茶を移し、その後すぐにまたティーポットに戻すという作業が数回入ります。
数回の移し替えを経てやっと完成。移し替えは何のためかとドライバーに尋ねると、お茶を泡立てるため、とのことでした。この泡が重要なようです。
味は想像通り、激甘な緑茶。しかもモーリタニアではお茶は1回で3度飲むのがマナーなようで、この一連の儀式を3セット行うことになりました。まあ、これも経験です。
休憩中、ロバに乗る遊牧民の少年を発見。こんな何も無いところで、どこから来てどこへ向かうのか。
結局ゆっくり1時間半ほど休憩。ドライバーの礼拝タイムも終えたら、目的地シンゲッティに向けて再出発です。ザルガ山からシンゲッティまでは砂丘地帯を断続的に横切るため、アップダウンが多くスリル満点なドライブが楽しめました。
時たま横切る遊牧民のテント。地球上でも住むには最も過酷な環境の1つだと思いますが、ここで生まれ育てばこの環境が普通になるのかもしれません。
空の青さと砂丘のベージュがそれぞれに濁りの無い色で良いコントラスト。
ちなみに、道中で見かけるラクダ達は、全て家畜です。今まで知らなかったのですが、サハラ砂漠のラクダは全て家畜化されてしまっており、野生のラクダというのはもはや存在しないとのこと。こんな野放しでどうやって探し出すのか不明ですが、良く見ると紐のようなもので背中が括られており、野生でないことは間違いありません。
15時頃、シンゲッティに到着。Bab Saharaのオーナーの通り、1日で見所をサクッと廻れる良いルートでした。